【難治性の腰痛・股関節・膝関節痛と戦う】大阪市東住吉区うえ接骨院です。
変形性股関節症では、病期に関係なく運動療法が必要になります。
運動療法は大きく分けて「筋力をつける運動」と「関節の動きを保つ運動」の2つがあります。
前股関節症や初期の段階では、股関節を支える筋力を強化することが中心になります。一方で、進行期や末期では、関節が硬くならないように可動域を保つ運動が重要になります。
今回は私がおススメしている運動療法「ジグリング」についてお伝えします。
ジグリングとは足ゆすり運動と言われていますが、簡単にいうと「貧乏ゆすり」です。
変形性股関節症に「ジグリング」という選択肢
これまで、変形性股関節症の保存療法として、はっきりとした科学的根拠が示された運動療法はほとんどありませんでした。
その中で、私が現在もっとも有効だと考え、患者さんに勧めているのが「ジグリング(足ゆすり運動)」です。
ジグリングは、変形性股関節症の保存療法の中で、数少ないエビデンスがある運動療法とされています。
関節の軟骨には血管や神経がなく、直接栄養が届きません。
軟骨の栄養は、関節の中にある関節液によって運ばれています。
ジグリングは、関節に強い負担をかけずに行える小さな動きの運動です。
この動きによって関節液が循環しやすくなり、軟骨に必要な栄養が行き渡ると考えられています。
その結果、軟骨の状態が改善し、痛みの軽減につながる可能性があります。
ジグリングやり方

①足の裏がきちんと床に着く高さのイスに座る。両足は開いていても、つけていてもいい。
②足の爪先をつけたまま、左右のかかとを小刻みに上下させる。かかとは2センチほど上がっていればいい。
自動ジグリング器

安静にしていても痛みがある重度の症状の方は自分でジグリングをすることもままならない状況だと思います。
そのような方には自動ジグリング器という選択肢もひとつの方法です。
価格は4万~5万くらいはしますが検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
ジグリングは股関節周囲の筋肉を緩める効果も期待
また、ジグリングには、股関節の周囲の筋肉をやわらかくする効果も期待できます。
変形性股関節症の方では、股関節が拘縮を起こし、関節が硬くなって動きにくくなっていることが少なくありません。
筋肉の柔軟性が高まることで、関節の動きが改善し、痛みの軽減につながる場合があります。
ジグリングの効果が出にくい人
これまで多くの患者さんにジグリングを指導してきた経験から、約3人に2人は痛みの軽減など、何らかの効果を感じています。
レントゲンで軟骨の再生が確認できるケースは、3人に1人程度だと聞きます。
ただし、ジグリングはエビデンスのある運動療法とはいえ、すべての方に効果があるわけではありません。
残念ながら、約3人に1人では効果が乏しい場合もあります。
特に、次のような条件がある場合は、股関節で体重を支える接触面積が少なくなり、ジグリングの効果が出にくいことがあります。
・骨粗鬆症が重い
・大腿骨頭の形状に問題がある
・股関節の変形が高度である
・背中が丸く、骨盤が後ろに傾いている
保存療法か手術か!メリット・デメリットを考える

保存療法を十分に行っても強い痛みが続く場合や、レントゲンで骨棘ができにくいタイプの場合、変形の進行が心配されるケースでは、手術が検討されます。
現在では、摩耗が少ない「クロスリンクポリエチレン」という素材の人工関節が使われており、耐用年数は25年以上とされています。
一般的には、50代以降であれば人工股関節手術は現実的な選択肢と考えられます。
ただし、40〜50代の方の中には、人工関節にするかどうかで悩まれる方も多くいます。
人工関節手術は入院期間が比較的短く、1〜2週間で退院し、1か月ほどで日常生活に戻れることが多いです。
一方、関節温存手術では、入院だけで2か月程度、その後も半年ほどのリハビリが必要になります。
「社会復帰を早くしたいが、できれば自分の関節を残したい」という葛藤を抱える方も少なくありません。
人工関節を選ぶかどうかは、医療者が決めるものではありません。
手術と保存療法のメリット・デメリット、将来の見通しを十分に理解したうえで、患者さん自身が選択することが大切です。
その際、保存療法にどこまで期待できるのかを正しく理解しておく必要があります。
たとえば、痛みを10から0にしたいと考えると、保存療法では満足できない結果になるかもしれません。
保存療法の目的は、痛みを日常生活に支障のないレベルまで下げ、生活の質を高めることです。
痛みが10から2程度まで下がれば、多くの方が日常生活を問題なく送れるようになります。
また、持病や高齢などの理由で手術が受けられない方、家庭や仕事の事情で人工関節をどうしても避けたい方もいらっしゃいます。
そうした方にとって、ジグリングを中心とした保存療法は、有力な選択肢の一つとして注目されています。
ジグリングで症状の改善がみられた変形性股関節症の例

ここでは、ジグリングを取り入れることで症状の軽減がみられた、変形性股関節症の患者さんの例をご紹介します。
Aさん(61歳・女性)のケース
Aさんは、10年ほど前から歩き始めるときに、左右の脚のつけ根に痛みを感じるようになりました。
別の医療機関を受診したところ、両股関節の変形性股関節症と診断されました。
股関節の動く範囲が狭くなり、靴下を履く、立ち上がる、座るといった日常動作にも不自由を感じていたそうです。
その後、痛みは徐々に強くなり、私が診察した時点では、左股関節は末期、右股関節は進行期にまで進んでいました。
安静にしていても強い痛みがあり、夜も眠れない状態だったため、私は自動ジグリング器の使用を勧めました。
Aさんは、左脚を中心に1日合計1時間ほどジグリングを行い、普段の移動では杖を使って股関節への負担を減らしていました。
しかし半年後、末期まで進行していた左股関節については、最終的に人工関節に置き換える手術を受けることになりました。
ただし、ジグリングを続けていたことで、手術前には左股関節の強い痛みが大きく和らいでいたそうです。
お住まいがエレベーターのないマンションの高層階で、階段の昇り降りが難しかったことから、生活面を考えて手術を選択されましたが、Aさんは
「手術までの間だけでも、あの激しい痛みから解放されて本当に助かりました」
と話していました。
Bさん(50代・女性)のケース
Bさんは30代後半での出産をきっかけに、左股関節の痛みを感じるようになり、変形性股関節症と診断されました。
女性は、妊娠・出産後と更年期以降の二つの時期に、股関節の症状が出やすい傾向があります。
シングルマザーだったBさんは、痛みを抱えながらも子育てを続けていました。
複数の整形外科を受診しましたが、どこでも人工関節の手術を勧められるばかりだったといいます。
43歳のときに私のもとを訪れた際には、すでに病状は末期に近い状態でした。
本来であれば、すぐに手術を検討してもおかしくない段階でしたが、まだ小さなお子さんがいたため、手術は見送り、保存療法で経過をみることになりました。
そこで、私はBさんにジグリングを指導しました。
Bさんは、毎日1時間を目安にジグリングを継続しました。
すると、3か月後の再診時には「痛みが軽くなってきた」と実感できるようになりました。
その後も根気よく続けた結果、安静にしていても起こっていた左股関節の激しい痛みが、3年後にはほとんど感じられなくなったのです。
ジグリングは、すぐに効果が出なくても続けることが大切です
ジグリングを始めた直後は、かえって痛みが強くなるように感じることがあります。
しかし、そこでやめてしまわず、まずは3週間を目安に継続することが重要です。
股関節にかかる負担を減らすという考え方
ジグリングは、年齢や性別、病期を問わず取り組める可能性のある保存療法です。
症状が進行している場合でも、人工関節の手術を検討する前であれば、すべての方が試す価値のある方法だと考えられます。
人工関節をできるだけ回避し、関節軟骨の回復を目指すのであれば、杖や車いすを活用して股関節にかかる負担をできる限り減らしながら、1日2時間以上のジグリングを行うことが望ましいとされています。
一方で、
・痛みを少しでも軽くしたい
・症状の進行を抑えたい
といった目的であれば、股関節に体重の3倍以上の負荷がかかる動作を避けながら、1日1時間程度のジグリングでも、十分な効果が期待できます。
効果を引き出すために大切なこと
ジグリングで最も大切なのは、力を入れず、リラックスした状態で続けることです。
効果を実感できるまでには、一般的に約3週間かかるとされています。
始めたばかりの頃は、違和感や痛みの増加を感じることもありますが、多くの場合は一時的なものです。
焦らず、無理のない範囲で、まずは3週間続けてみてください。
それでも、3か月間継続しても変化が感じられない場合は、人工関節手術など、他の治療法を検討する一つの目安と考えてよいでしょう。
ジグリング(足ゆすり運動)の位置づけ
ジグリングは、これまで行ってきた治療やリハビリに「追加できる」保存療法です。
副作用の心配が少なく、股関節の動きを促し、関節の隙間を保つことで、長期的な症状改善が期待されています。
これまで不可逆的に進行すると考えられてきた変形性股関節症に対しても、改善の可能性を持つ方法として注目されています。
少しでも多くの方が、無理のない形でジグリングに取り組み、ご自身の体の変化を感じていただければと願っています。
関連ページ:変形性股関節症|本当に楽になったセルフケア
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