前回の記事では「痛みの正体は脳の誤作動である」という驚きの真実をお伝えしました。
読者の皆様からは、「じゃあ、具体的にどう動けばいいの?」「PRTのワークをもっと詳しく知りたい!」という切実な声をたくさんいただきました。
今回は、2024年〜2025年の最新疼痛医学に基づいた、「脳を安心させて、痛みのスイッチを切る」ための具体的な実践マニュアルをお届けします。
1. 【部位別】脳の「警戒モード」を解くリハビリ法
脳が「その場所を動かすのは危険だ」と思い込んでいる場合、無理なストレッチは逆効果です。
脳を「騙し、なだめる」動きを取り入れましょう。
腰痛・背中の痛み:マイクロ・ムーブメント
腰痛に悩む人の脳は、腰を「ガチガチの鉄板」のようにイメージしています。
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やり方: 椅子に座り、目をつぶって、腰の骨(腰椎)一つひとつが「水に浮かぶ氷」のように、ほんの数ミリずつ前後左右に揺れているのをイメージします。
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ポイント: 大きく動かすのではなく、脳に「揺れても痛くない、安全だ」という微細な信号を送り続けることが目的です。
肩・首の痛み:鏡(ミラー)の魔法
肩が上がらない人は、脳内で「肩を上げる=激痛」という回路が固定されています。
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やり方: 痛くない方の肩だけを鏡に映し、スムーズに動かしている様子をじっと見つめます。
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ポイント: 視覚情報を利用して、脳に「自分の肩はこんなに軽やかに動くんだ」と錯覚させます。これにより、脳内の「体の地図」が正常化されます。
手足・末端の痛み:テクスチャ・チャレンジ
しびれや痛みがある場所は、脳がその部位の感覚を正しく処理できていません。
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やり方: シルク、ウール、綿など、異なる素材の布を用意し、目をつぶって患部をなでます。「これはどの布かな?」と脳にクイズを出してください。
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ポイント: 「痛みの信号」よりも「質感の判断」に脳のリソースを割かせることで、痛みの回路を上書きします。
2. PRT(痛み再処理療法)集中ワーク:脳の「解釈」を変える
PRTの本質は、痛みが出た瞬間の「思考のクセ」を修正することにあります。
以下のステップを今日から1日5分、静かな場所で行ってみてください。
ステップ①:痛みの「再定義」
痛みを感じたら、反射的に「痛い!」と思う前に、こう定義し直します。
「これは組織の損傷ではない。私の脳が、私を守ろうとして過剰に反応している『安全なアラーム』だ」 この言葉を口に出すだけで、脳の扁桃体(恐怖を感じる場所)の活動が抑制されることが分かっています。
ステップ②:セマティック・トラッキングの実践
痛みを「敵」ではなく「ただのデータ」として観察します。
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楽な姿勢で座り、痛みのある場所に意識を向けます。
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「チクチクする」「熱い」「脈打っている」など、形容詞だけで表現します。
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その感覚に対して「良い・悪い」の判断をせず、ただ「そこにあるな」と眺めます。
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少しでも感覚が変化(移動したり、強さが変わったり)したら、「あ、変化した。固定されたダメージではない証拠だ」と自分に伝えます。
ステップ③:肯定的な感情とのリンク
脳は「楽しい」「心地よい」と感じている時、痛みを通すゲートを閉じます。
痛みを感じている最中に、あえて「最近あった小さな幸せ」を一つ思い浮かべてください。
美味しいものを食べた瞬間、ペットの温かさ、美しい景色。その感情を脳に充満させながら、痛みと共存してみます。
3. リハビリを成功させる「脳のルール」
リハビリを行う上で、絶対に守ってほしいルールが一つだけあります。それは**「頑張りすぎないこと」**です。
脳科学において、慢性痛のリハビリの敵は「努力」と「根性」です。
「もっと動かさなきゃ」「早く治さなきゃ」というプレッシャーは、脳を緊張させ、皮肉にも痛みの感度を上げてしまいます。
「今日は5%だけ、脳を安心させてあげよう」 そのくらいの軽い気持ちで取り組むのが、最も早く脳の回路を書き換えるコツです。
あなたは「治る力」をすでに持っている
最新の疼痛医学が教えてくれる最大の希望は、「あなたの体は壊れていない」ということです。
痛みは、あなたの脳が一生懸命あなたを守ろうとした結果、少しだけやり方を間違えてしまっただけ。
今日ご紹介したリハビリやPRTのワークは、その間違った学習を解きほぐすための「脳への優しいお手紙」です。
一歩ずつ、焦らずに。あなたの脳と仲直りしていきましょう。
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